平成29年度子どもの貧困対策実施状況を読む
昨日2018年7月31日、「平成29年度子供の貧困の状況と子供の貧困対策の実施状況」が内閣府ホームページに発表された。
これですhttp://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/taikou/pdf/h29_joukyo.pdf
私の注目した点をまず簡潔にまとめたい。
この報告書によれば
①生活保護世帯の子どもの貧困率は下降傾向(25年度16.3%→29年度13.9%)
②生活保護世帯の子どもの高校進学率は上昇傾向(25年度90.8%→29年度93.6%)
③生活保護世帯の子どもの高校中退率は下降傾向(25年度5.3%→29年度4.1%)
④子どもがいる現役世帯のうち大人が一人の貧困率は下降傾向(25年度54.6%→29年度50.8%)
⑤スクールソーシャルワーカーの配置人数は急上昇(25年度1008人→29年度1780人)
⑥スクールカウンセラーを配置する小学校の割合は上昇傾向(25年度37.6%→29年度58.6%
この報告書の読み方の大事なところは前年の報告書を参照することです。
前年のデータと比較すると
①生活保護世帯の子どもの貧困率は変化なし(13.9%→13.9%)
残念ながら、他の数値もほとんど横ばいでした。
唯一、⑤のスクールソーシャルワーカーの配置人数は1399人→1780人と順調に増えていっているようです。
平成26年8月26日に「子供の貧困対策に関する大綱」が閣議決定された当時から、
①上記の貧困に関する指標の達成目標が明記されていないこと
②財源の保証がないこと
③学習支援・就労支援のような自立支援中心で経済的困窮に対する直接支援が不十分
といった問題点が指摘されていました(「子どもの貧困ハンドブック」より)
この報告書を読んでいてまず一つ浮かんだ疑問点は
①なぜ高校のスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置率が比較されていないのか?
ということです。
重点施策として
「高校中退の防止や中退後のフォローを充実するとともに、大学・専修学校等へ安心して進学できるようにするため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門家による教育相談体制の整備充実のほか、大学等奨学金事業の充実等による経済的負担の軽減を図る」
とあるのに専門家による相談体制は作らず、「退職教員や大学生といった多様な人材を入れる」という方法で解決しようとしています。高校に配置しているのかは統計上は不明なままです。
中退理由を分析して直接的に有効な支援をするべきだと思います。
あと、「世界青年の船」とか「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」とか貧困対策になっていないものも入っています。
そして問題となっていた経済的困窮への直接支援ですが、
生活支援として
①産前産後サポート事業
③公営住宅への優先入居
④住宅資金の貸し付け
⑤住宅を失う恐れのある者に対する住宅確保給付金
の以上です。
非常に少ない。
貧困対策はやはり進んでいない。